動物病院のかかり方

老犬に往診してくれる動物病院|費用の目安とできること・探し方

公園を散歩する犬と飼い主

執筆・編集: うちの子のかかりつけ編集部

歩けなくなった老犬や、通院そのものが負担になっている犬には、自宅で診察を受けられる「往診(訪問診療)」という選択肢があります。費用は通常の診療費に加えて、往診料(距離に応じておおむね2,000〜8,000円程度)と時間外の加算がかかるのが基本の構成です。ただし往診ではレントゲン・全身麻酔・手術・入院はできません。この記事では、往診でできることとできないこと、費用の内訳、ペット保険の扱い、探し方と依頼時の準備を整理します。

まず結論:往診が向いているケース

状況 往診の向き・不向き
歩けない・寝たきりで、車での移動が大きな負担 向いている
病院に着くと震える・パニックになるなど通院ストレスが強い 向いている
慢性疾患の定期的な点滴・注射・投薬の調整 向いている
終末期の緩和ケア、自宅での看取りを考えている 向いている
飼い主が高齢・車がない、多頭飼いで一度に連れて行けない 向いている
骨折や腫瘍でレントゲン・CTによる精密検査が必要 通院が必要
手術・全身麻酔・入院管理が必要 通院が必要
呼吸が苦しく酸素室が必要な重篤な状態 通院が必要(まず電話を)

往診でできること・できないこと

自宅の床で休む犬

往診専門の獣医師による解説では、自宅でできる診療として次のような内容が挙げられています。

  • 視診・触診・聴診、体温・体重の測定
  • 血液検査、尿検査、糞便検査
  • 超音波(エコー)による簡易的な検査 ※機材と犬の状態次第
  • 皮下点滴・注射、投薬の処方と調整
  • 傷の手当て、ワクチン接種、健康診断
  • 慢性疾患の管理、終末期の緩和ケア

一方で、レントゲン検査、CT・MRI、全身麻酔を伴う処置、外科手術、入院管理は往診では対応できません。また、暴れてしまう犬の血液検査や精密検査も難しくなります。実際、往診専門病院の料金表を見ても、超音波・血液・尿・便検査の項目はあってもレントゲンの項目はないことが一般的です。

「往診なら病院に行かなくて済む」ではなく、「往診でできる範囲と、通院が必要な範囲を分けて考える」のが正しい理解です。どこまで対応できるかは病院ごとに差があるため、依頼の電話で必ず確認してください。

費用の内訳と目安

往診の会計は、通常の診療費とは別に往診料が加わる構成になっています。

項目 内容 目安
往診料(出張費) 自宅まで訪問する費用。拠点からの距離に応じて段階的に設定されることが多い 2,000〜8,000円程度
初診料・再診料 通常の動物病院と同じ考え方 初診1,000〜2,000円程度
検査・処置・薬代 血液検査、超音波、点滴、投薬など 内容による
時間外・夜間加算 夕方以降・深夜・休日は大きく加算される 数千円〜数万円
その他 高速道路代、駐車場代、当日予約の追加料金など 実費または規定額

実際の料金表を見ると、たとえば東京都内の往診専門病院ではエリア別に往診料を2,200円・3,300円・5,500円と設定し、夜間(19時以降)や深夜の診察料を大きく上乗せしている例があります。茨城県の訪問診療クリニックでは、往診料を市町村ごとに約4,950円から8,250円まで段階的に定め、遠方には高速道路利用の加算を設けています。

「往診料は距離で決まる」「時間帯で大きく変わる」という2点を押さえておけば、見積もりの読み方に迷いません。金額は改定されるため、必ず依頼先の最新の料金表を確認してください。動物病院の診察料の一般的な相場は動物病院の初診料の相場で解説しています。

ペット保険は往診に使える?

ここは誤解の多いところです。診療費そのものは補償対象でも、往診料や時間外の割増分は対象外としている保険会社があります。

たとえば第一アイペットは、支払対象外の費用として「時間外診療費および往診料等の診察加算料」を明記しています。au損保も、夜間診療・休日診療による割増費用は補償対象外で、割増以外の通常の診療費は支払対象になると案内しています。

すべての保険会社が同じルールというわけではないため、加入している保険の重要事項説明書か、コールセンターで事前に確認してください。

往診専門の病院と、かかりつけが行う往診

往診には大きく2つの形があります。

  • 往診専門の動物病院:訪問診療に特化しており、完全予約制で待ち時間がありません。機材を車に積んで訪問しますが、レントゲン・入院・手術が必要な場合は、提携先や二次診療施設・大学病院を紹介する形になります。
  • 通常の動物病院が行う往診:かかりつけがすでにカルテを持っているため経緯を把握しており、必要になれば来院に切り替えられるのが利点です。ただし外来診療の合間に行うため、対応できる日時が限られます。

往診専門の獣医師も、「動物病院のかかりつけ」と「往診のかかりつけ」を両方確保して使い分けることをすすめています。往診を頼むときは、これまでの検査結果や処方内容を共有できるようにしておくと、診療がスムーズになります。かかりつけを持つ意味についてはかかりつけの動物病院の選び方もご覧ください。

往診してくれる動物病院の探し方

依頼するときに伝えること・当日の準備

獣医師の診察を受ける犬

電話・申込時に伝える情報

  • 飼い主の氏名・住所・電話番号(駐車スペースの有無も)
  • 犬の名前・犬種・年齢・体重・性別・性格(人見知り、咬む可能性の有無)
  • いつから、どんな症状が出ているか
  • かかりつけ病院名、診断名、現在飲んでいる薬
  • してほしいこと(点滴、血液検査、往診での看取りの相談など)

当日そろえておくとよいもの

  • 明るい部屋と、畳半畳〜一畳ほどの診察スペース
  • 滑らないマットやタオル(フローリングは老犬が踏ん張れません)
  • 検査機器用の電源
  • お薬手帳、これまでの検査結果、フードの記録
  • 気になる症状を撮った動画(ふらつき、けいれん、呼吸の様子など)

掃除やおもてなしの準備は不要です。普段どおりの生活環境を見てもらうことが、往診の利点のひとつでもあります。床の滑りやすさ、段差、トイレの位置といった住環境に対して、その場で助言をもらえることもあります。

在宅での緩和ケア・看取りの相談もできます

往診では、症状をやわらげて残された時間を穏やかに過ごすための緩和ケアや、自宅での看取りについて相談できる病院があります。往診獣医師協会に登録している病院のなかには、ターミナルケアや介護指導を診療分野として掲げているところもあります。

「そろそろ最期のことを考えたい」と口に出すのは、飼い主にとって重い決断です。ただ、選択肢を知っておくことと、いま決めることは別のことです。痛みや呼吸の苦しさをどう和らげられるのか、通院を続ける場合と自宅で過ごす場合で何が変わるのかを、早めに相談しておくと、いざというときの迷いが少なくなります。対応できる内容や条件は病院・獣医師によって異なるため、必ず個別に確認してください。

治療方針に迷いがあるときはセカンドオピニオンという選択肢もあります。

よくある質問

Q. 往診の費用はいくらくらいかかりますか?

通常の診療費に加えて往診料(距離に応じておおむね2,000〜8,000円程度)がかかります。夜間・深夜・休日は大きく加算され、高速道路代や駐車場代が実費で請求されることもあります。金額は病院ごとに異なるため、依頼時に総額の目安を確認してください。

Q. 往診でレントゲンは撮れますか?

撮れません。レントゲンやCT・MRI、全身麻酔を伴う処置、外科手術、入院管理は通院での対応が必要です。血液検査・尿検査・糞便検査・簡易的な超音波検査は、機材と犬の状態によって自宅で行える場合があります。

Q. 一般の動物病院でも往診してもらえますか?

対応している病院もあります。ただし外来診療の合間に行うため日時が限られます。まずはかかりつけに相談し、難しい場合は往診専門の病院を紹介してもらうとよいでしょう。

Q. ペット保険は往診にも使えますか?

診療費本体は補償対象でも、往診料や時間外の割増分は対象外としている保険会社があります。加入中の保険の重要事項説明書や問い合わせ窓口で事前に確認してください。

出典・参考

※この記事は一般的な情報提供を目的としたものです。往診で対応できる範囲・費用・保険の適用条件は、動物病院や保険会社によって異なります。診断・治療の判断や、往診の可否は必ず獣医師・動物病院にご確認ください。

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